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知っていますか?日本は先進国で唯一、乳がん死亡率が増加し続けている国です

こんにちは。今日は院長に代わってスタッフが担当します!よろしくお願いします。
私がここのクリニックで働くまで乳がんについて知らないことが多々ありました。
しかし、実際に働き始めてから、乳がんについて調べるにあたり、いろいろ知る機会がありましたので、皆さまに共有します。

皆さんは日本における乳がんの死亡率は先進国でどれぐらいか知っていますか??

 

年齢標準化率(世界)10万人当たり、男性および女性乳がん死亡率 出典:GLOBAL CANCER OBSERVATORY(世界保健機関 国際がん研究機関)

 

このグラフは世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関が発表した、主要先進国の乳がん死亡率の推移を示したものです。

他の先進国(イタリア、英国、米国、カナダ)の女性の乳がん死亡率が1990年代をピークに減少傾向にある中で、日本だけが一貫して増加し続けています。

 

なぜこのような違いが生まれるのでしょうか?その大きな理由の一つが、日本の乳がん検診受診率の低さにあります。

皆さんは、日本の乳がん検診受診率が先進国の中で極めて低いことをご存知でしょうか?

厚生労働省の国民生活基礎調査によると、検診が推奨される40~69歳の女性における乳がん検診受診率は、2022年時点でわずか**47.4%**に留まっています。この数値を他の先進国と比較してみると、その深刻さがより明確になります。

 

 

主要先進国との受診率比較

国名 受診率 調査年
日本 47.4% 2022年
オランダ 77.1% 2019年
米国 76.5% 2019年
英国 74.2% 2020年
フランス 70.0% 2019年
韓国 65.9% 2020年
ドイツ 65.7% 2019年

出典:厚生労働省 国民生活基礎調査等

 

この低い受診率が招く深刻な結果

グラフで示されているように、早期発見・早期治療により治癒の可能性が高いとされる乳がんにおいて、検診は死亡率を減少させる最も有効な手段です。他の先進国では検診制度の充実により死亡率が減少している一方で、日本では検診による早期発見の機会が十分に活用されず、死亡率が増加し続けるという深刻な状況になっています。

なぜ多くの女性が検診を受けないのでしょうか?

調査によると、乳がん検診を受けない理由は以下のような複合的な要因が絡み合っています:

 

心理的な障壁

  • 「健康状態に自信があり、必要性を感じない」(2%)
  • 「検査に伴う苦痛の程度が分からず不安」(3%)
  • 「がんと分かるのが怖い」(3%)

物理的・経済的な障壁

  • 「受ける時間がない」(6%)
  • 「経済的負担」(3%)

知識・情報の障壁

  • 「心配な時はいつでも医療機関を受診できる」(7%)
  • 「検診の見落としがあると思っている」(8%)

出典:乳がん検診に関する各種調査データ

 

「症状がないから大丈夫」は大きな誤解です

多くの方が「心配な時はいつでも医療機関を受診できる」と考えていますが、これは大きな誤解です。大きな病気ほど症状が出た頃には手遅れになっていることや、長期間の闘病生活が必要となることがほとんどです。

乳がん検診の真の目的は、自覚症状のない段階でがんを早期に発見すること、つまり「予防医療」なのです。

検診への不安や疑問は、決してあなた一人だけのものではありません。多くの女性が同じような気持ちを抱えています。

 

痛みへの不安について

マンモグラフィの痛みが心配な方も多いですが、月経前1週間など乳房が張りやすい時期を避けることで痛みを軽減できます。当院では、受診者の皆様の不安を和らげるよう、丁寧なコミュニケーションを心がけています。

 

時間がない方へ

多忙な日々の中で自分の健康管理のための時間を確保するのは確かに大変ですよね。しかし、発見が遅くなると、何か月、もしくは、年単位での治療になることも少なくはありません。そうなると、将来的には長期間の通院生活となり、結果としては検診を定期的に受けることの方が、時間を短く済ますことができるのです。

 

経済的負担について

多くの自治体では住民検診を無料または低額で提供しています。

高槻市の場合は40歳以上の方は2年に1回マンモグラフィ、30歳以上39歳以下の方は超音波検査を自治体の補助を利用して、無料で受けることができます。

また、会社にお勤めの方についても会社が補助をだしてくれることもあるので、受けることができる方は、ぜひ利用していただきたいですね。

 

 

家族の皆さまへ

乳がんの早期発見は、本人の意思決定が大部分を占めますが、家族からの声掛けは、本人の心を動かす原動力になります。

もし、大切なパートナーが乳がんで辛い闘病生活をすることになったとき、多くの方が振り返り、

「もっと気遣ってあげればよかった」

「もっと普段の変化に気づけれたら・・・。」

「あの時、検診行ってこいって言えてたら・・・。」と後悔します。

 

そんな未来はできる限り、なくなってほしいし、見たくないなと医療に携わり続けて常々思います。

だからこそ、一番近くにいる家族から、「検診受けた?受けに行っておいで」と優しく声をかけてもらえたら、嬉しいです。

 

検診を受けてみようかな?と思いましたら、お気軽にご相談ください。あなたの健康を守るために、私たちがサポートいたします。

 

 

 

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